横浜家庭裁判所横須賀支部 平成7年(家)152号 審判 1995年10月11日
申立人 プラグス、クリスチャン・チャールズII世 外1名
事件本人 梶晴男 外2名
主文
未成年者を申立人らの養子とする。
理由
1 申立の趣旨
主文と同旨
2 当裁判所の判断
本件記録及び家庭裁判所調査官の調査結果によれば、次の事実が認められる。
1 申立人プラグス、クリスチャン・チャールズII世(1957年5月29日生)は、アメリカ合衆国の国籍で、ワシントン州に国内法的居住地があるアメリカ海軍軍艦○○号に乗り組む兵曹長であり、同人は1979年11月22日、申立人プラグス、ヘレナ・メイス(1953年2月7日生)と婚姻した。同女は、当時フィリピン国籍であったが、その後、アメリカ合衆国国籍を取得し、ともに1985年来日し、現在は肩書住所地に居住している。両名の間には実子がなく、今後も身体的な事情により実子は期待できない。
2 未成年者は、実父梶隆男と実母梶深雪との間の三男として愛知県において平成5年6月20日出生したが、実父母ともに未成年者を養育する経済力は有していたものの、子供は二人までと決めていたことから、未成年者晴男が生まれる前から養子に出すことを決め、出生後4か月ほどで米国人宣教師であるスミス氏に引渡し、養子にすることを承諾しており、その後、現在に至るも自ら養育する意思はなく、特に未成年者に対し愛情も抱いていない。
3 申立人両名は、スミス氏の紹介で未成年者を知り、平成6年3月14日から同居を開始し、その後は、申立人両名、申立人である養母の成人した連れ子と4人で暮らしており、健康に育っている。申立人らは未成年者を実の子として可愛がっており、今後も養育する意思を有している。
ところで、申立人らはいずれもアメリカ合衆国の国籍を有するものの、上記肩書住所地に居住しており、したがって当裁判所に国際及び国内管轄権があるものと解されるが、その準拠法としては、養親となる申立人らのアメリカ合衆国の国内法的居住地であるアメリカ合衆国ワシントン州法が適用されると解すべきところ(法例20条1項前段)、同州法によれば、18歳以上の者は養子を迎えることができること、養子縁組には子が14歳以上の場合は子の承諾書のあること、子が18歳以下の場合はその両親の承諾書のあることなどが必要とされているところ、上記事実によれば、これらの要件を充足していることが認められる。また、養子の本国法において養子その他の第三者等の承諾を要する場合はその要件も備えることが必要であると解すべきところ(法例20条1項後段)、養子の本国法である日本国民法によれば、その法的効果に鑑み、特別養子の要件を充足する必要があると解されるところ、以上の事実によれば、両親には養育意思が全く欠如しており、要保護要件も含め、その要件を充足しているものと認められる。なお、同州法によれば、養子は養親の実子とされ、実父母との関係はなくなることから、主文としては、日本国における特別養子の主文と同じにするのが相当である。
よって、本件申立を相当と認め、主文のとおり審判する。
(家事審判官 大塚正之)